コルベット(上)

■沙里院級コルベット3隻(4隻?)

bullet

満載排水量:490t(Combat Fleet基準)、650t(ジェーン年鑑基準)

bullet

大きさ:62.1m(全長)×7.3m(全幅)×2.4m(喫水)

bullet

機関:ディーゼル・エンジン2、2軸、3,000bhp

bullet

最大速度:21kt

bullet

航続距離:2,700海里(16〜18kt基準)

bullet

武装1:57mm 2連装×2、14.5mm 4連装×4

bullet

武装2:RBU-1200 5連装×2(513艦のみ該当)、対潜爆雷(DC)投下機×2、機雷30発搭載可能

bullet

レーダー:水上レーダー1、航海レーダー1

bullet

ソナー:Stag Horn?(513艦のみ該当)

bullet

電子装備:チャフ発射機(4連装)×2(NI資料でのみ確認可能)

bullet

乗務員:60〜70名(ジェーン年鑑60名、NI 65〜70名)

bullet

原生産国:北朝鮮(旧ソ連のTral級の北朝鮮生産型)

bullet

計3隻建造、現役3隻

 沙里院級は、1965年に北朝鮮で自主建造したものである。当時、北朝鮮が保有していた旧ソ連のTral級又はFuga級を参照して作ったものと推定している。

 果たして実戦で運用価値があるのかという程度に落後した性能を持った艦艇だが、北朝鮮海軍において500t級以上の大きさを持った艦艇は、羅津級、ソホ級、沙里院級、Tral級だけである。この中でソホ級は、設計ミス故なのか、出港する事例が稀で、Tral級は、沙里院級よりも古臭い艦艇である。結局、北朝鮮においてそのまま運用できる500t級以上の艦艇は、羅津級2隻と沙里院級3隻の外にない。北朝鮮が保有する大部分の艦艇は、若干の悪天候( 荒天)にも出港することができない。落後した性能だが、沙里院級やTral級を依然現役で運用する外にない状況なのだろう。

 1隻は、北朝鮮の海洋警察(正確に北朝鮮のどの組織を指し示すのかは未詳、原文はMartime Coastal Security Police Fleet)の旗艦として運用しているという。

 1991年撮影写真において、沙里院級531艦という艦番(Hull Number)が確認され、93年には、Tral級671艦という艦ナンバーが確認された。90年代中葉には、これとは多少異なる艦番(Hull Number)である725、726、727艦が確認された。ジェーン年鑑は、沙里院級とTral級を合わせて計5隻で、その艦番が531(沙里院)、671(Tral)、725(未詳)、726(未詳)、727(未詳)であるものと紹介している。『Guide to Combat Fleets of the World』は、沙里院級の現在の艦番が725、726、727、728であるものと推定しているが、沙里院級は、3隻と見ている。恐らく、過去に沙里院級500番台、Tral級は、600番台の艦番を持っていたが、最近に700番台の艦番に統一されたようである。

 ジェーン年鑑は、満載排水量650tのコルベット艦と分類しているが、『Guide to Combat Fleets of the World』 最新版は、満載排水量490tの沿岸哨戒艇に分類している。World Navies Todayも、元来満載排水量約600t級のコルベットに分類したが、Ver 1.02から満載排水量約500t級の沿岸哨戒艇に分類している。恐らく、最近に沙里院級の満載排水量に対する ある種の情報を入手したようである。興味深くも、1982年に発刊されたFM34-71を見れば、沙里院級の排水量が450tと出ている。同資料に提示された排水量が満載排水量なのか、標準排水量なのかに対しては、具体的な説明がない。しかし、羅津級を1,800t、Komar級を80tと表示したのを見れば、この資料の排水量は、満載排水量と考えられる。そうだとすれば、米軍情報当局では、既に 早くから沙里院級の排水量が450t級だと考えていた計算である。

  FM34-71 1982 Jane 92〜93 Jane 94〜95 Jane 96〜97 C.F 90〜91 C.F 98〜99 C.F 2K〜01
沙里院級
の排水量
標準 450t 600t 475t 450t 450t
満載 650t 650t 650t 600t 490t 490t

  『Jane's Fighting Ship』96〜97年版によれば、RBU-1200対潜ロケット発射機は、513艦にだけ2基が設置されているという。ソナーも、531艦にだけ設置されているという。この外に、沙里院級は、対潜爆雷(DC)投下機×2基を装備しており、機雷30発を搭載することができる。

 沙里院級の艦砲搭載状態では、資料により差異が甚だしい。これもまた、沙里院級とTral級の外形が似ていることによる錯覚と、沙里院級自体の武装が個別艦毎に多少差異があることによる誤り、北朝鮮の沙里院級が部分的に武装を交替したことによる混乱が複合的に作用した結果のようである。

出所 艦砲装着状態
FM 34-71 1982 諸元 85mm×1、57mm 2連装×1、14.5mm 4連装×2
図面 ?mm×1、57mm 2連装×1、14.5mm 2連装×4
北韓武器図鑑 1989 諸元 137mm×2、100mm×1、14.5mm 4連装×3
図面 100mm×1、?mm×3
ジェーン年鑑 92〜93 100mm×2、14.5mm 4連装×3 or 4
ジェーン年鑑 94〜95 100mm×1 or 2、14.5mm 4連装×3 or 4
ジェーン年鑑 96〜97 57mm 2連装×2、37mm 2連装×2
Conway's 47〜95 100mm×1、37mm×2、14.5mm 4連装×4
北朝鮮ハンドブック 1997 諸元 85mm×1、57mm 2連装×1 or 2、37mm 2連装×2、14.5mm 4連装×4
図面 ?mm×1、57mm 2連装×1、14.5mm 2連装×4
Combat Fleets 90〜91 76mm×1、57mm 2連装×2、25mm 2連装×2
Combat Fleets 98〜99 57mm 2連装×2、14.5mm 4連装×4
Combat Fleets 2K〜01 57mm 2連装×2、14.5mm 4連装×4
筆者結論−513艦基準 57mm 2連装×2、14.5mm 4連装×4
筆者結論(その他の沙里院級) 85mm×1、57mm 2連装×1モデルは存在したか、存在している可能性がある。

  先ず、FM34-71に出てくる沙里院級の図面を良く見てみよう。下の図は、FM34-71においてSo-1級と紹介しているが、筆者が見るには沙里院級の図面が確実なようである(SO-1級と図面が互いに置き換わった。)。下の図面の艦尾にある砲塔の形を見れば、57mm70口径長2連装対空砲を描いたものであることが確実である。従って、艦尾にある艦砲が57mmで、艦首にある砲塔が85mm艦砲であろう。この85mmの艦砲の実態は、少し不確実である。北朝鮮で装着した可能性がある旧ソ連製85mm級艦砲としては、85mm52口径長艦砲90Kがある。しかし、図面に見える砲塔は、90K砲塔ではない。90K砲塔でなければ、85mm戦車砲塔である外ないが、戦車砲塔と見るにも 形が多少異常である。FM 34-71の諸元説明では、14..5mm 4連装×2基とされているが、図面上では、明白に2連装×4基である。

沙里院級コルベット

 次に北韓武器図鑑の137mmというのは、誤りが明らかである。137mmという口径も異常だが、仮にこれが130mmを意味するとしても、北朝鮮海軍艦艇では、130mm級艦砲を搭載した前例がないことから、やはり信じるのが難しい。 恐らく、37mmの誤表記と考えられる。下の図面を見ても、艦首の艦砲は、100mm B-34を描いたもののようで、艦尾の艦砲は、14.5〜37mm級砲塔(恐らく、37mm単装K70を描いたものと推定される。)を描いたものであることが明白で、どこにも130mm艦砲2門は見えない。

沙里院級コルベット

 ジェーン年鑑は、沙里院級とTral級の諸元を同時に説明しており、若干曖昧ではあるが、『Jane's Fighting Ship』94〜95年版までの説明は、大部分誤りと見られる。下の1991年に撮影され、1992年に航海された沙里院級531艦の写真があるが、良く見て欲しい。この写真を見れば、艦首と艦尾に各々57mm70口径長ZIF-31砲塔があるのを容易に確認することができる。1996年以降、NIとJIG資料全てが沙里院級が57mm砲塔2個を主武装として搭載していると、見解を変更しているが、下の写真を見れば、沙里院級がこのような武装を行ったのは、90年代中葉からではなく、既に90年代初盤(又はそれ以前から)からだったのを確認することができる。従って、90年代初・中葉期間、沙里院級の武装に対して、各種説が出てきたのは、大部分単純な誤りと見る外にない。

沙里院級531艦

 ジェーン年鑑は、既に92年から上の写真を載せているが、数年間、依然沙里院級の主武装が100mm戦車砲×2門だと紹介する 失敗を犯した。

 『Conway's All the World Fighting Ship 47〜95』において、100mm×1、37mm×2門と説明したのも、90年代前半期のジェーン年鑑と同一内容である。下で再び説明するが、ジェーン年鑑を含めて、各資料に見える沙里院級の100mm搭載説は、過去、一時Tral級に100mm56口径長B-34艦砲を搭載していたのをそのまま移したか、さもなければ、85mm戦車砲塔を誤って識別したためだと見える。

 米海兵隊の『North Korea Country Handbook』1997年版には、沙里院級が85mm×1、57mm× 2連装×1 or 2、37mm 2連装×2、14.5mm 4連装×4基を搭載していると出ている。一旦『North Korea Country Handbook』1997年版に載せられた図面を 良く見てみよう。この図面は、基本的にFM34-71 1982年の図と同じものだと分かる。艦首側に76〜100mm級に見える砲塔が1個あり、後方に57mm砲塔1個がある。煙突の後ろ側の上部構造物に恐らく14.5mm砲塔と見られる小型砲塔4個が描かれている。当然図面と諸元は、全く異なる。1つ確実なのは、沙里院級に85mm砲塔×1基、57mm砲塔2連装×2基を同時に搭載できないという事実である。57mm70口径長砲塔は、武器が14.5tに達し、85mm戦車砲塔に 比べて決して軽くなく、57mm70口径長の砲塔の大きさも、T-34の85mm砲塔よりは大きい。このような大型砲塔3基を沙里院級に同時に設置することは、物理的に不可能である。米海兵隊ハンドブックにおいて、「85mm単装×1、57mm 2連装×1 or 2」と説明したのは、「(85mm単装×1/57mm 2連装×1) or 57mm 2連装×2」を誤って説明したものと見られる。

沙里院級コルベット

 結局、沙里院級の武装に対する各資料の差異は、大部分単純な誤りに過ぎないだろう。現在公開された情報だけで判断すれば、沙里院級の主武装は、57mm70口径長砲塔×2という説明が最も正確なものと見られる。ただ、米陸軍省FM34-71 1982年版と米海兵隊ハンドブック1997年版を総合してみれば、沙里院級中に85mm戦車砲塔×1、57mm 2連装×1基を装着したVariationは、過去に存在したか、現在存在する可能性が充分にあるようである。

 最後に沙里院級のその他の小口径艦砲と対空砲を良く見てみよう。『Jane's Fighting Ship』96〜97年版は、沙里院級の艦砲武装が57mm×2、37mm 2連装×2と説明しており、『Guide to Combat Fleets of the World』 最新版は、57mm 2連装×2、14.5mm 4連装×4と説明している。北朝鮮艦艇が搭載する37mm63口径長2連装モデルとすれば、W-11-Mである外ないが、Tral級の写真では、W-11-Mが鮮明に識別されるが、1991年に撮影された沙里院級513艦の写真では、37mmW-11-M砲塔が良く識別できない。Tral級と沙里院級は、全長が62mと同じため、同じ大きさの写真で比較すれば、砲塔の大きさが 似ていなければならない。しかし、写真上では、沙里院級の未識別砲塔2個を合わせた大きさがTral級の37mm砲塔1個の大きさと似ている。たとえ写真を 撮った角度が異なるとしても、2つの写真の全体的な形態、大きさを比較してみれば、沙里院級の砲塔は、37mm砲塔としては、大きさが多少小さく、形態も異なるようである。断定することはできないが、沙里院級513艦の写真上に見える砲塔は、37mmではなく、14.5mm乃至25mm級砲塔と見られる。『Guide to Combat Fleets of the World』では、14.5mmとしたことから、この砲塔は、14.5mmである可能性が高いようである。結論として、沙里院級に関する各種資料中において、『Guide to Combat Fleets of the World』 最新版の内容が最も正確なものと考えられる。

沙里院級とTral級の武装

 沙里院級のレーダー、その他の電子装備は、次の通りである。下の図表中にジェーン年鑑の説明は、全て誤りと見られる。先ず、1991年に撮影された羅津級513艦の写真を見れば、前方マストの一番上に位置するPot Headレーダーを明確に識別することができる。その写真を見て、 あるいはPot Drumだと考えることもできるが、Skin Headだと識別するのは、常識外である。その上、『Jane's Fighting Ship』96〜97年版は、対水上レーダーとしてPot Head又はDon-2を搭載し、航海レーダーとしてModel 351(Type351)搭載するとしたが、 これもほとんど常識外の説明に見える。Model351(Type 351)は、Pot Headレーダーの中国生産型である。同じレーダーを1つは航海用に、1つは対水上用に搭載 するというのも常識外だが、Don-2の主用途は、航海レーダーで、Pot HeadとType351(Model 351)の主用途は、対水上レーダーだが、ジェーンの説明通りとすれば、反対に装着した計算となるためである。

出所 対水上レーダー 航海レーダー IFF チャフ発射機 ソナー
Jane's Fighting Ship    92〜93 Skin Head Don-2 Ski Pole
94〜95 Skin Head

Ski Pole
96〜97 Pot Head or Don-2 Type 351 Ski Pole Stag Horn
N.I Guide to the Combat Fleets 90〜91

98〜99 Pot Head Don-2 6連装発射機×4
2K〜01 Pot Head(Type 351) Don-2 6連装発射機×4
Conway's 47〜95 Pot Head Don-2 Ski Pole or Yard Rake
筆者結論−513艦 Pot Head(Type 351) Don-2

戻る 上へ 進む

最終更新日:2003/05/25

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル